上を向いて歩こうのカバーは誰が有名?

上を向いて歩こうのカバーは誰が有名?

坂本九さんが歌った不朽の名曲「上を向いて歩こう」。
ふと耳にしたとき、その懐かしいメロディに心が温かくなった経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
しかし、この曲が日本国内だけでなく、世界中で数多くのアーティストによってカバーされ、全く異なるアレンジで愛され続けていることは意外と知られていないかもしれません。

「オリジナル以外にどんなバージョンがあるのだろう?」
「海外ではどんな風に歌われているのか知りたい」
このように感じている方も多いことでしょう。

この記事では、国内外で発表された「上を向いて歩こう」の著名なカバーや、それぞれのバージョンが持つ独自の魅力について詳しく解説します。
これを読めば、ロックからジャズ、R&Bに至るまで、この楽曲が持つ多面的な魅力を深く理解し、お気に入りのバージョンを見つけることができるでしょう。

国境と時代を超えた多様なアーティストによる再解釈

国境と時代を超えた多様なアーティストによる再解釈

結論から申し上げますと、「上を向いて歩こう」のカバーは、単なる懐メロの再現にとどまらず、世界中のアーティストによる多種多様な再解釈の歴史であると言えます。
日本国内のポップス歌手はもちろんのこと、アメリカのソウルグループ、イギリスのジャズバンド、さらには日本のロックレジェンドまで、ジャンルを問わず幅広く歌い継がれているのが特徴です。

この楽曲は、1961年の発表以来、日本国内で80万枚から100万枚の売上を記録した国民的ヒット曲ですが、その真価は海外での成功によって決定づけられました。
海外では「SUKIYAKI」というタイトルで知られ、1963年には全米ビルボードHot 100で3週連続1位を獲得するという、日本人アーティストとして唯一無二の偉業を成し遂げています。

この歴史的な背景があり、現在に至るまで「世界的なスタンダードナンバー」として認識されています。
そのため、カバーされる際も、原曲の忠実な再現から、歌詞やアレンジを大胆に変更したものまで、極めてバリエーションが豊富であることが最大の特徴と言えるでしょう。

なぜこれほど多くのカバーが存在するのか

なぜこれほど多くのカバーが存在するのか

「上を向いて歩こう」がこれほどまでに多くのアーティストにカバーされ続けるのには、明確な理由がいくつか存在します。
ここでは、その主な要因を3つの観点から解説します。

1. 全米No.1ヒット「SUKIYAKI」としての世界的知名度

第一の理由は、この曲が日本国内のヒット曲という枠を超え、世界的な名曲として認知されている点にあります。
1963年にアメリカでビルボード1位を獲得した事実は、音楽史における特異点と言えます。

きっかけは、1962年にイギリスのディキシーランド・ジャズ・バンド、ケニー・ボール&ヒズ・ジャズメン(Kenny Ball & His Jazzmen)がインストゥルメンタル版としてカバーし、全英チャートで10位を記録したことでした。
これがアメリカのDJの耳に留まり、坂本九さんのオリジナル版が紹介されることになります。
その際、日本語のタイトルが発音しにくいという理由で、日本を象徴する単語として「SUKIYAKI」と名付けられました。

この経緯により、海外のアーティストにとっては「日本の曲」というよりも、「かつて全米を制した美しいメロディの曲」として認識されており、時代を超えてカバーの対象となり続けているのです。

2. 普遍的なメロディと歌詞の解釈の自由度

第二に、中村八大氏による作曲のメロディラインが持つ普遍性が挙げられます。
この曲は、五音音階(ペンタトニックスケール)と呼ばれる、東洋的でありながら西洋音楽にも通じる親しみやすい音階が使用されています。
そのため、ジャズ、ソウル、ロック、ボサノヴァなど、どのようなジャンルのアレンジにも馴染む柔軟性を持っています。

また、海外版の多くは日本語の歌詞を直訳するのではなく、メロディに合わせて全く新しい英語の歌詞がつけられることが一般的です。
例えば、「失恋の悲しみ」や「愛の思い出」をテーマにしたラブソングとして解釈されることが多く、アーティストごとに異なるメッセージを込めやすいという点も、カバーが増え続ける要因の一つと考えられます。

3. 日本国内における歴史的再評価と継承

第三に、日本国内においても、単なる「昭和の歌謡曲」としてではなく、時代ごとの空気感を反映させる素材として再評価され続けている点が挙げられます。
特に、忌野清志郎さん率いるRCサクセションによるロックアレンジは、この楽曲に「反骨精神」や「力強いメッセージ性」という新たな側面を付与しました。

また、東日本大震災後など、日本が困難に直面した際には、人々を勇気づける応援歌として多くのアーティストに歌われる傾向があります。
このように、「日本人の心の歌」としての地位が確立されているため、世代を超えたアーティストがリスペクトを込めてカバーを行っているのです。

国内外の著名なカバー事例

国内外の著名なカバー事例

ここでは、具体的にどのようなアーティストが「上を向いて歩こう」をカバーしているのか、代表的な事例を海外と国内に分けて紹介します。
それぞれのアレンジの特徴を知ることで、この楽曲の奥深さをより理解することができるでしょう。

海外アーティストによる「SUKIYAKI」としてのカバー

海外では、主にR&Bやソウル、インストゥルメンタルの分野で名作が生まれています。

  • テイスト・オブ・ハニー(A Taste of Honey)
    1981年にリリースされたこのバージョンは、全米ビルボードで3位を記録する大ヒットとなりました。
    彼女たちは歌詞を英語のラブソング("It's all because of you..."で始まる歌詞)に改変し、琴の音色を取り入れたソウルフルなバラードとして仕上げています。
    このカバーによって、80年代の世代にも「SUKIYAKI」の名が広く知れ渡ることになりました。
  • 4 P.M.(フォー・ピー・エム)
    1995年に発表された男性ボーカルグループによるアカペラバージョンです。
    全米チャートで8位を記録しました。
    美しいハーモニーを中心としたR&Bスタイルで、90年代の音楽シーンにマッチした洗練されたアレンジが特徴です。
    テイスト・オブ・ハニー版の英語歌詞を踏襲しており、非常にロマンチックな仕上がりとなっています。
  • ケニー・ボール&ヒズ・ジャズメン(Kenny Ball & His Jazzmen)
    前述の通り、海外ヒットの火付け役となったインストゥルメンタル・ジャズです。
    トランペットを中心とした軽快なディキシーランド・ジャズのアレンジで、原曲の持つ哀愁と明るさの両面を見事に表現しています。

国内アーティストによる個性豊かなカバー

日本国内では、原曲へのリスペクトを持ちつつも、アーティストの個性を色濃く反映させたカバーが多数存在します。

  • RCサクセション(忌野清志郎)
    日本のロック史に残る重要なカバーです。
    1970年代後半からライブの定番曲として演奏され、アルバム『RHAPSODY』などに収録されています。
    忌野清志郎さんの独特な歌唱法と、ソウルフルで荒々しいロックサウンドは、この曲が持つ「悲しみ」を「エネルギー」へと昇華させました。
    「日本のロックスタンダード」としての地位を確立したバージョンと言えます。
  • 中森明菜
    2013年に発売されたカバー・コンピレーションアルバム『6×8 Song Book Vol.1 ~上を向いて歩こう~』や、自身のカバーアルバムなどで披露しています。
    「歌姫」と称される表現力で、原曲の持つ哀愁を深く掘り下げ、異国情緒漂うアレンジで歌い上げているのが特徴です。
    しっとりとした大人の雰囲気を楽しむことができます。
  • その他の著名な参加アーティスト
    2013年の50周年記念コンピレーションアルバムには、他にも多彩な顔ぶれが参加しています。
    例えば、上原ひろみさんはピアノによるインストゥルメンタルで情熱的な演奏を披露し、一青窈さんは独特の節回しで歌詞の世界観を表現しています。
    また、久保田利伸さんはTy Stephensと共に、ファンキーかつグルーヴィーなアレンジでこの曲を現代的なR&Bへと進化させました。

楽曲の普遍性を証明する歴史的記録

ここまで紹介してきた通り、「上を向いて歩こう」のカバーは多岐にわたりますが、これらは全てこの楽曲が持つ「普遍的な力」を証明するものです。
最後に、この楽曲がいかに特別であるかを整理します。

「上を向いて歩こう」および「SUKIYAKI」は、単に売れた曲というだけでなく、「言語の壁を超えて感情を共有できるツール」として機能してきました。
1961年のオリジナル発売から半世紀以上が経過した現在でも、新しい世代のアーティストによってカバーされ続けている事実は、このメロディが時代に左右されない強度を持っていることを示しています。

特に、2000年には坂本九さんの実娘である大島花子さんが参加した「上を向いて歩こう2000(SUKIYAKI 2000)」がリリースされるなど、家族や次世代へと歌い継がれる動きも見られます。
これは、永六輔さんの歌詞と中村八大さんのメロディ、そして坂本九さんの歌声が作り上げた世界観が、文化遺産として定着していることの証左と言えるでしょう。

お気に入りのバージョンを探してみましょう

「上を向いて歩こう」のカバーについて、その歴史的背景や具体的なアーティストを紹介してきました。
坂本九さんのオリジナルバージョンが素晴らしいのはもちろんですが、世界中のアーティストたちがそれぞれの解釈で紡いだ「SUKIYAKI」もまた、異なる輝きを放っています。

もし、まだ聴いたことがないバージョンがあれば、ぜひ一度耳を傾けてみてください。
テイスト・オブ・ハニーの甘いソウルバラードに浸るのも良し、RCサクセションの熱いロックに心を震わせるのも良し。
あるいは、最新のジャズアレンジでリラックスするのも良いでしょう。

様々なカバーを聴き比べることで、この名曲が持つ「悲しみの中に希望を見出す」というメッセージを、より深く、多角的に感じ取ることができるはずです。
あなたにとって特別な「上を向いて歩こう」が、きっと見つかることでしょう。